建物劣化診断をおこなって具体的にいつ、どこを修繕すべきかを明らかにする

大規模修繕工事の準備段階で建物や設備の建物劣化診断をおこなうことで、具体的にいつ、どの部位の修繕が必要か明らかになります。大規模修繕の実施時期が近づき、具体的な計画を検討する前段階で、 実際にどの程度の劣化が進んでいるかを調査して検討にあたっての基礎資料とします。第1回目の大規模修繕では、新築から10年目くらいのタイミングで管理会社から建物の建物劣化診断を勧められたことがきっかけとなって大規模修繕の検討に入る管理組合が多いようです。

建物劣化診断の必要性

建物劣化診断の必要性

大規模修繕工事の実施にあたり、建物の劣化状態を把握することは、工事の実施や資金計画を練るうえで重要な基礎資料となります。

事前に作成した長期修繕計画で定められた修繕の時期はあくまでも「予定」なので、実際劣化の状況とは食い違いが起こります。したがって計画上での修繕の実施時期がきているからといって、必ずしも修繕を実施する必要はありません。

計画上の大規模修繕の時期が近づいた時点で建物劣化診断をおこなって、本当に修繕が必要か判断することになります。建物劣化診断の結果は、最終的に大規模修繕工事を実施する際に理事会が住人に対して大規模修繕をおこなう必要性を説明する上での合理性を裏づける根拠にもなるので、合意形成に向けた大事なプロセスとも言えます。

建物劣化診断の実施の是非

検討段階でこうした専門家による建物の建物劣化診断はおこなうことが望ましいのですが、当然、費用が掛かるので、本当に建物劣化診断をおこなう必要であるかの判断は、理事会や修繕委員会で慎重に検討する必要があります。場合によっては、その診断に掛かる費用も工事費用に回したほうが合理的という考え方もあるからです。

専門家による劣化調査で修繕が先延ばしにできる部位を把握することができるといった考え方もありますが、現実的には、大規模修繕前に実施する建物劣化診断は「調査・診断」と称していても、診断の結果をまとめるだけはなく、大規模修繕工事の実施を前提に、改修工事の仕様や工事費用の概算見積りといった業務まで含むケースが多いようです。

建物劣化診断の時期

建物劣化診断を行う時期は、その目的によって異なるため、一概にはいえません。大規模修繕の内容と時期を確定するための診断ということに限れば、診断をおこなうべき時期は、長期修繕計画に定められた工事実施時期の2年程度前におこなうことが、管理組合の資金計画や合意形成などの検討期間から逆算して望ましいでしょう。

建物劣化診断の依頼先

ここで重要になるのが誰に調査診断を依頼するかということです。もちろん工事を受注したい施工業者業者に建物劣化診断を任せれば、大規模修繕工事の実施を前提とした結果となることは明らかです。

調査診断は修繕工事の基礎となる重要な手順ですから、公正な結果と適切な修繕方法を示す専門家に依頼することが大切です。

一般的には依頼先は、設計事務所や管理会社、施工会社等が挙げられます。 建物劣化診断の結果は工事の実施時期や工事内容を大きく左右することになるため、公正な第三者に依頼することが必要です。

もちろん調査診断を依頼する専門家には、実際に建築工事や大規模修繕などの経験があり、マンションを構成している材料や工法等について熟知していなければなりません。

建物劣化診断の概要

建物劣化診断にも、その症状や必要性に応じたいくつかのグレードがあります。建物劣化診断は、竣工図書や修繕履歴等によるチェック、目視調査、専用の測定機器を用いるなど、さまざまなグレードがあるので、建物の状況や管理組合の要望によってどのレベルまでおこなうかを選択します。

大規模修繕工事の前におこなう建物劣化診断の内容は、外壁や鉄部や屋上防水など建物の構造・仕上げについてのみ行う場合と、給排水や電気などの設備なども含めて行う場合があります。

ヒアリング調査、住人へのアンケート調査、目視・打診調査で全体の状況を把握して、必要に応じ特定部分の詳細調査をおこない大規模修繕としておこなうべき修繕項目とその時期を決めるための根拠とします。

建物劣化診断のフロー

建物診断は、基本的には次の四つの項目から成り立っています。これらのフローとおのおのの概要を次に示します。

1予備調査
  • 管理組合からのヒアリング
  • 竣工図書の保管状態の確認
  • 修繕履歴の整備状態の確認
  • 現地観察
2一次診断
  • 竣工図書の調査
  • 修繕記録の調査
  • 住人アンケート調査
  • 現地簡易調査
3二次診断
  • 診断機器を用いた詳細調査
4改修基本計画
  • 改修項目・改修時期の計画作成

1.予備調査

「予備調査」のなかで主に行なわれるのは、管理組合へのヒアリングです。現場に足を運び、現地の状況をできるかぎり詳細に把握します。

調査者は管理組合や理事から現状の問題点や不具合をヒアリングします。また、新築時の竣工図書の有無や販売時のパンフレットの他、これまでの修繕履歴や毎年の議案書等を確認します。

2.一次診断

「一次調査」では主に目視・触診によって、建物の不具合や問題箇所の調査・診断を行います。

調査者は、現地調査では、建物の各部の劣化・損傷状態、問題個所を詳しく調査診断します。一次診断の診断方法は、目視や、テストハンマーなどの簡易な診断機器を用いて行います。

また、竣工図書や修繕履歴等の精査、マンション居住者にアンケート調査等をおこない問題点の把握をおこないます。

3.二次診断

「二次調査」ではより専門的な診断機器を使い精密検査を実施します。
調査者は、一次診断の結果により、より詳細な調査が必要になった場合には二次診断を行います。

内視鏡(ファイバースコープ)を使っての給水管の腐食状態の調査や、コンクリートをコア抜きをして、圧縮強度や中性化の調査・診断にあたることとなります。

4.改修基本計画

調査者は、一次診断、二次診断の結果から、早急に修繕が必要な箇所、緊急性のない箇所を仕分けして「診断報告書」にまとめます。

また、大規模修繕工事の実施を前提とした調査診断では大規模修繕工事としてまとめて行うべき項目や改修方法を「改修基本計画書」としてまとめ、管理組合に提出します。

建物劣化診断の終了後

建物劣化診断の終了後
専門家による建物劣化診断が完了すると診断報告書が作成されます。報告書には、調査した部位の劣化度や修繕の必要や緊急度などが記載されています。

この診断の結果は、理事会や修繕委員会以外の組合員に対しても報告をして、現状のマンションの劣化状況について認識をしてもらうことが重要です。これが修繕の必要性についての理解につながります。

この段階でまずやっておかなければならないのは、大規模修繕工事の概要を定めるという作業です。

建物劣化診断の結果に基づいて理事会や修繕員会では、具体的にどのように大規模修繕工事に着手するかの判断をおこないます。建物劣化診断の結果を基に、修繕の緊急度合い判断して、工事の優先順位を見極めた上で改修方法について検討を始めます。

このような検討は、理事会や修繕委員会のメンバーだけでもできないことではありませんが。以後の工事をスムーズに進めるためには調査をおこなった会社やコンサルタン、管理会社なども交えておこなった方がよいでしょう。