大規模修繕の検討初期の段階で「責任施工方式」と「設計監理方式」を選択する

大規模修繕工事の検討初期の段階では、まず大規模修繕の発注方式を決めなくてははなりません。発注方式によって依頼する専門家等との関わり方は異なってくるからです。大規模修繕の発注方式は様々ですが、分譲マンションでは主に管理会社や施工会社に一括して任せる「責任施工方式」、設計・監理を設計会社に、工事を施工会社に分けて発注する「設計監理方式」の2つの方式が採用されます。

大規模修繕をおこなう2つの方法

一般に大規模修繕を行う場合は、次の二つの方法があります。

1.責任施工方式
施工会社への一括発注方式(修繕設計も施工会社が行う)
2.設計監理方式
設計・工事監理と工事施工を分離する方式

2の設計監理場合には必ず共通仕様書を作成した上で複数の施工会社に見積りを依頼します。共通仕様書をを提示しないと施工会社が独自の判断で工事費の見積りを行うため、見積額が妥当な金額なのか判断ができなくなるおそれがあります。

「責任施工方式」「設計監理方式」それぞれにメリット・デメリット

「責任施工方式」「設計監理方式」それぞれにメリット・デメリット
「責任施工方式」「設計監理方式」それぞれにメリット・デメリットがあります。設計監理方式を採用するとなると、設計業務・監理費用として工事金額の5~10%を負担しなくてはなりません。このようなことから、特に小規模のマンションでは、信頼のおける施工会社に一括して発注する責任施工方式を採用するケースも少なくありません。どちらが良いということではなく管理組合の事情にあった発注方式を採用することが重要です。

工事の実施に向けての2つの方法

大規模修繕工事の実施の方法には、委託・契約の方式によって「設計監理方式」と「責任施工方式」の2つがある。

1.設計監理方式

大規模修繕工事における設計監理方式とは 「工事仕様の検討」と「工事監理」を外部のコンサルタントに委託し、工事の施工は、このコンサルタントとは別の施工会社に発注する方式です。この方式では、 工事費以外にもコンサルタント費用の負担が発生するのがデメリットですが「工事仕様の検討」と「施工」をおこなう業者が別々なので、施工会社の選定等については客観的なアドバイスを貰える他、管理組合にとって本当に必要とされる工事内容を客観的に見極めた上で決定することができます。また工事期間中は、工事監理がおこなわれるメリットがあります。なお、工事監理とは、施工会社が契約書にそって正しく工事をおこなっているか監督することです。

●発注先の考え方

コンサルタントとしての役割の依頼先としては、一般には大規模修繕専門の設計事務所やマンション管理士事務所等が考えられますが、日常業務を委託している管理会社と信頼関係ができている場合には、継続して委託する場合もあります。どのようなパートナーを選択するにしても、管理組合を公正な立場から支援する役割を担うため、信頼できる相手を選択することが重要です。

●特徴、注意点

この方式の一番のメリットは、管理組合が第三者の専門家(=コンサルタント)からの支援を受けられることです。しかし、コンサルタントの仕事は、具体的な業務が目に見える工事の施工等とは異なり、施工会社の選定・資金計画等、工事実施段階では工事監理といった業務ですので、発注する業務範囲や内容につ いては、十分に協議しておくことが必要となります。

なお、設計監理方式を採用すると、施工費用とは別に、設計・監理費用が必要になりますが、競争入札等の競争原理を導入して施工会社を選定することにより全体のコストとしては削減できる可能性もあります。

2.責任施工方式

責任施工方式とは工事の設計から施工まで、工事全般をひとつの業者に一括して請け負わす方式です。 日頃から付き合いのある信頼できる施工会社がいる場合に採用されるケースが多いようです。この方式の場合には、設計管理方式のようなコンサルタントの設計・監理費用が不要といったうメリットがあります。ただし、管理組合が主体性を持って工事を進めないと、設計と施工が一体化するため、専門的知見が施工会社に偏るため、工事内容や費用が適性であるか管理組合側では判断が難しい点がデメリットとなります。

●発注先の考え方

責任施工方式では、工事全般を一括して一つの施工業者に依頼するわけですから、発注先の選定については特に慎重におこなう必要があります。責任施工方式では、工事費用が適性であるか判断が難しいので、日頃から付き合いのある信頼のおける施工会社がいない場合には、複数社から見積りを取得して検討することが望ましいでしょう。施工業者には、管理組合の立場に立った対応や十分な施工実績が求められます。

●特徴、注意点

施工業者から相見積りを取得する場合には、各々の業者の比較検討が容易になるように、統一の仕様書を事前に作成するようにします。理事会や修繕委員会が中心となって、住人アンケートや建物劣化診断の結果を基に工事内容や数量等を定めた仕統一様書を作成します。

そして、この仕様書を統一の基準として、複数の施工業者に見積りを依頼して、その中から発注業者を決定することが望ましいでしょう。しかし現実的には、こうした統一仕様書の作成や発注先の選定には、専門的な知識が不可欠なため、理事会だけで進めていくのは困難なケースも多いでしょう。この場合には費用が掛かっても専門知識を持った第三者の専門家の支援を受けることが望ましいでしょう。

また、責任施工方式では、工事費用の中に「設計費用」や「監理費用」が含まれることが多いようですが、これらの作業は、施工業者自身によるもので、第三者の専門家によるチェックが入るわけではありません。特に工事監理は大規模修繕の成功を左右するわけですから、理事会や修繕委員会が自分たちで工事監理をおこなっていくという強い気持ちが必要です。

管理会社への一括発注

前述した発注方式とは別に、大規模修繕工事の実施を日常業務を委託している管理会社に一任するという方法を取る管理組合も多いようです。もちろん管理会社任せにすれば工事費用が割高になるリスクは高いでしょう。一方で日常の管理業務を通して、建物の状況や住人の情報をもちあわせているといったメリットがないわけではありません。
管理会社への一括発注は、大規模修繕工事の建物劣化診断、設計・監理から施工に至るまで業務全体を任せるわけですから、少なくとも管理組合と管理会社の間に日常業務を通した信頼関係が築かれていることが前提になるでしょう。