
私たちの暮らしに欠かせない「水」は、実は見えないところで活躍する給水管によって届けられています。一見地味な存在ですが、給水管は年数とともに劣化し、赤水や漏水といったトラブルの原因になることも。とくにマンションでは共用部と専有部の両方に配管があるため、日頃の管理がとても大切です。この記事では、給水管の歴史や素材の進化、点検方法や管理のポイントについて学んでいきます。
給水管は“サビ”と向き合いながら発展してきた
かつて多くのマンションで使われていたのは「水道用亜鉛めっき鋼管」。鉄の内面に亜鉛メッキを施したこの管材は、時間の経過とともに内側から腐食し、赤水や漏水の原因になっていました。
これに対処する形で登場したのが、「硬質塩化ビニルライニング鋼管」です。鋼管の内側にビニル製の管を挿入することで、水と鉄の接触を避けて腐食を抑制。しかし、継手部分の鉄がむき出しになることで、そこからサビが再発するという課題がありました。
1990年代にはこの弱点を克服する技術が進化し、継手内部に「コア」という樹脂部品を組み込んだ管端防食継手が開発されました。これにより、継手の耐久性が格段に向上し、より安心して使える配管となっていきました。
配管材の進化と現在の主流
マンションで使用される配管材は、その建築時期によって大きく異なります。以下に、管材の変遷と特徴をまとめた表をご覧ください。
建築時期 | 主な配管材 | 特徴 | 課題 |
---|---|---|---|
~1975年 | 亜鉛めっき鋼管 | 鉄に亜鉛メッキを施した構造 | 赤水・漏水の原因に |
1975~1990年頃 | 硬質塩化ビニルライニング鋼管 | 内部にビニル管を挿入 | 継手の腐食 |
1990年以降 | 管端防食継手付き鋼管 | 継手に樹脂製コアを内蔵 | 鋼管部の点検が必要 |
2000年以降 | ステンレス管・樹脂管(PE・PB管) | 腐食に強く長寿命 | 継手劣化や破損リスク |
最近では、共用部・専有部ともにステンレス管や樹脂管を採用する例が増えており、メンテナンス性や耐久性の面で高く評価されています。
給水管の寿命と点検の考え方
配管の寿命は、材質や施工品質、水質、使用環境などによって左右されます。たとえば、従来の鋼管では20〜30年程度を目安に更新が必要とされています。とくに継手や異種金属との接続部から劣化が始まりやすいため、注意が必要です。
一方で、ステンレス管や樹脂管などは配管自体は半永久的に使用可能とも言われていますが、継手のパッキンの劣化や外的損傷といったリスクはゼロではありません。そのため、たとえ新しい素材であっても、点検や計画的な補修を怠らないことが重要です。
主な点検方法には以下のようなものがあります:
- 内視鏡調査(ファイバースコープ):管内をカメラで直接確認
- X線調査:配管の腐食具合を透視
- 水圧測定:漏水の有無を確認
- 抜管調査:一部の管を取り出して詳細確認
鋼管では内面腐食の確認が主な目的ですが、樹脂管の場合は接合部や外観に異常がないかを確認することが中心です。
まとめ
給水管は、長い時間をかけて素材や技術が進化し、私たちの生活を支え続けています。かつては赤水や漏水といったトラブルが多発していましたが、現在では耐久性に優れたステンレス管や樹脂管の採用が進み、トラブルは大幅に減少しています。しかし、どんな素材でも継手やパッキンといった部分は経年で劣化し、トラブルの原因になる可能性があります。だからこそ、給水管の状態を定期的に点検し、必要に応じて更新計画を立てることが大切です。マンションの理事会や管理組合が中心となって、将来を見据えた維持管理の体制を整えることで、住民の安心・安全な暮らしを支えることができるのです。