初めての大規模修繕工事: マンション住民が知るべき5つのポイント


戦後の高度経済成長期に建てられたマンションが築40年を超え、「高経年マンション」としてさまざまな課題を抱え始めています。劣化、耐震性の低下、管理不全など、放置すれば安全性や資産価値にも影響が出る深刻な問題です。この記事では、高経年マンションが直面する問題とその対策について学んでいきます。

高経年マンションの現状と将来予測(出典:国土交通省)

国土交通省の資料によると、築40年以上の分譲マンションは今後大幅に増加する見通しです。

年次築40年以上の戸数(推計)
2022年(令和4年)約101万戸
2032年(令和14年)約252万戸
2042年(令和24年)約431万戸

これは、全国の分譲マンション約684万戸(2022年時点)のうち、将来的に約6割以上が築40年を超えることを意味しています。

出典:国土交通省「マンション政策の現状と課題について」
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001313642.pdf

老朽化がもたらす4つの問題

問題の種類内容具体例
物理的劣化建物や設備の経年劣化コンクリートのひび割れ、給排水管の漏水、鉄筋の錆び
機能的劣化設備の陳腐化・利便性の低下オートロック未設置、バリアフリー未対応など
社会的劣化生活様式の変化への不適応駐車場の空き、共用設備の使いにくさ
耐震問題旧耐震基準で建設された建物の耐震性不足震度6以上の地震に耐えられない可能性

高経年マンションに対する主な対策

対策方法内容注意点
修繕・改良・改修長期修繕計画に基づき劣化部分を修繕・更新計画的な資金確保と住民の合意形成が必要
建て替え建物全体を新築に建て直す多額の費用と長期間、区分所有者の5分の4の合意が必要(区分所有法による)
売却マンションを売却して資産整理管理組合の承認と、売却価格の低下リスクを考慮

実効性のある対策を進めるために

● 長期修繕計画の見直しと適切な実行

築年数や劣化状況に合わせた修繕計画の策定と、住民合意を前提とした着実な修繕がカギです。

● 専門家の助言を活用

建築士やマンション管理士などの専門家のアドバイスを得ることで、無駄のない実効性ある判断が可能になります。

● コミュニケーションの活性化

住民間の情報共有・問題意識の共有を通じて、合意形成が進みやすくなります。

● 法改正や制度変更への対応

耐震基準の改正などの制度的な変更にも柔軟に対応できる体制を整えておくことが重要です。

まとめ

マンションの老朽化は避けて通れない問題ですが、早期の対策によってリスクを最小限に抑えることができます。築40年以上の高経年マンションは今後急増し、物理的・機能的・社会的・耐震面の劣化が複合的に起こる可能性があります。そのため、管理組合と住民が連携し、適切な修繕や建て替え、または売却といった選択肢を慎重に検討する必要があります。さらに、専門家の助言や最新制度の情報収集を活用しながら、住民の合意形成を円滑に進めることが大切です。コミュニケーションと実行力を備えた管理組合運営によって、老朽化したマンションにも新たな価値と安心をもたらすことができるでしょう。

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