鉄部・アルミ部・ステンレスの塗装|素材別の下地処理と塗料選定


大規模修繕では外壁やタイルに目が向きがちですが、手すり・面格子・庇・サッシまわりなど鉄部・アルミ部・ステンレスの塗装は、素材ごとに正しい下地処理と塗料を選ばないと数年で塗膜が剥がれます。この記事は、管理組合・修繕委員会が業者の工程提案や見積りを評価できるよう、素材別の劣化の特徴・下地処理・塗料選定・相場目安を実務目線で整理したものです。

鉄部・アルミ部・ステンレス──素材ごとに劣化と密着性が違う

塗装対象の金属を一括りに「鉄部塗装」と呼ぶ見積りは要注意です。素材によって劣化の出方も、塗料の密着のしやすさも大きく異なるためです。

鉄部は錆が最大の敵で、放置すると断面が痩せて強度が落ちます。一方アルミ部やステンレスは錆びにくい反面、表面が緻密で塗料が乗りにくく、下地処理を怠ると塗膜ごと剥離します。「錆びないから塗らなくてよい」と「塗っても剥がれやすい」は別の話で、両方を理解しておく必要があります。

共用部の手すり・面格子は鉄製、サッシや庇の枠はアルミ、宅配ボックスや笠木の一部はステンレスというように、1棟の中で素材が混在します。素材を仕分けしないまま一律単価で見積もる提案は、後の剥離トラブルの原因になりやすい点です。

素材主な劣化塗料の密着下地処理の要点
鉄部錆・塗膜剥がれ比較的良い錆落とし(ケレン)+錆止め
アルミ部白い粉化・点食乗りにくい面粗し+専用プライマー
ステンレスもらい錆・変色最も乗りにくい脱脂+密着プライマー

下地処理──ケレン・面粗し・プライマーで密着を作る

金属塗装の品質は、塗る前の下地処理でほぼ決まります。見栄えのよい上塗りでも、下地が不十分だと早期に剥離します。

鉄部はまず「ケレン」と呼ぶ錆・旧塗膜の除去を行います。ケレンは作業の程度で1種〜4種に分かれ、一般的な改修では電動工具と手工具を併用する3種ケレンが中心です。ケレン後は速やかに錆止め(下塗り)を塗り、再発錆を防ぎます。

アルミ部とステンレスは錆落としではなく、表面をわずかに荒らす「面粗し」と脱脂が要点です。つるつるの面のままでは塗料が食いつかないため、研磨と専用の密着プライマーで足がかりを作ります。プライマーの種類が素材に合っていないと、上塗りごと剥がれるため、提案書でプライマー名が明記されているかを確認してください。

下地処理で確認したい項目は次の通りです。

  1. 素材ごとにケレン種別・面粗しの方法が分かれているか
  2. 鉄部に錆止め(下塗り)が工程として入っているか
  3. アルミ・ステンレスに専用プライマーが指定されているか
  4. 下塗り後の乾燥・放置時間が工程表にあるか

塗料選定──素材と環境に合わせて中・上塗りを選ぶ

下地が整ったら、中塗り・上塗りの塗料を選びます。金属部はウレタン樹脂塗料かシリコン樹脂塗料が一般的で、近年は耐候性の高いフッ素樹脂塗料を笠木や庇など雨がかりの強い部位に使う例もあります。

選定の基本は、外壁本体との耐用年数のバランスです。外壁を高耐久で仕上げても金属部だけ短命な塗料にすると、次の修繕周期がずれて足場を別途組む費用が無駄に発生します。下表は塗料グレードと耐用年数の目安です(あくまで目安で、環境や下地状態で前後します)。

塗料グレード耐用年数の目安金属部単価の目安(㎡)
ウレタン樹脂約8〜10年約900〜1,500円
シリコン樹脂約10〜13年約1,200〜1,900円
フッ素樹脂約15〜18年約2,000〜3,500円

海沿いや交通量の多い立地では塩害・大気汚染で劣化が早まるため、ワンランク上のグレードを検討する価値があります。逆に内廊下など雨がかりの少ない部位までフッ素にする必要はなく、部位ごとにメリハリをつけるのが費用対効果の高い選び方です。

まとめ|鉄部・アルミ部・ステンレス塗装の5つの実務ポイント

  • 素材を仕分けする。鉄部・アルミ部・ステンレスは劣化も密着も異なり、一律単価の見積りは要確認
  • 下地処理で品質が決まる。鉄部はケレン+錆止め、アルミ・ステンレスは面粗し+専用プライマー
  • 提案書でプライマー名・ケレン種別・乾燥時間が明記されているかをチェックする
  • 塗料は外壁本体と耐用年数のバランスで選び、修繕周期のズレと足場の無駄を避ける
  • 立地(塩害・交通量)と部位の雨がかりに応じてグレードにメリハリをつける(相場・年数はいずれも目安)
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