
分譲マンションでは、経年劣化による資産価値の低下や、安全性の確保のために、定期的な「大規模修繕工事」が欠かせません。しかし、その費用は数千万円単位になることもあり、理事や住民にとっては気になるポイントです。この記事では、大規模修繕工事にかかる費用の目安や抑える工夫について学んでいきます。
工事内容によって異なる費用
大規模修繕工事の費用は、工事の種類や建物の状態、規模によって大きく異なります。一般的なマンションで実施される主な工事項目と費用の傾向は以下のとおりです。
工事の種類 | 内容の例 | 費用の目安(マンション1棟あたり) |
---|---|---|
外壁補修・塗装工事 | クラック補修、塗装の塗り替え | 数百万円〜数千万円 |
屋上・バルコニー防水 | 防水シートの張替え、塗膜防水 | 数百万円〜1,000万円前後 |
シーリング工事 | サッシ周りや外壁目地の打ち替え | 数百万円 |
鉄部塗装 | 手すり、扉、階段などの金属部の塗装 | 数十万円〜数百万円 |
エレベーター改修 | 内装リニューアル、機械部品交換など | 数百万円〜数千万円 |
上記はあくまで目安であり、築年数や過去の修繕履歴、使用している素材、施工方法によって金額は変動します。そのため、信頼できる業者に現地調査を依頼し、個別に見積もりを取得することが大切です。
費用の総額はどのくらい?
マンションの大規模修繕工事では、**総工費の目安として「建設当時の新築費用の10〜15%程度」**といわれています。住戸数に応じた概算は以下のとおりです。
戸数 | 想定される費用総額の目安 |
---|---|
約30戸 | 約5,000万円〜8,000万円程度 |
約50戸 | 約8,000万円〜1億円超 |
約100戸 | 1億円〜1.5億円以上 |
※上記は外壁塗装や防水工事など標準的な工事内容を想定したケースです。
1戸あたりに換算すると、100万〜150万円前後が目安となります。ただし、特別な設備(機械式駐車場やタワー式エレベーターなど)がある場合や、長年修繕されていない場合は、これより高額になる可能性があります。
費用を抑えるためのポイント
修繕工事の費用は決して小さくありませんが、次のような工夫でコストを抑えることが可能です。
- 長期修繕計画を活用して計画的に進める
小さな修繕をこまめに行うことで、大きな工事の必要性を減らせます。 - 複数の業者から相見積もりを取る
提案内容や価格を比較することで、適正価格で契約しやすくなります。 - 設計監理方式を活用する
施工と監理を分けることで、品質とコストの両方をコントロールできます。 - 補助金や助成制度を確認する
自治体によっては、修繕工事に対して補助金が出る場合があります。
ただし、「安さ」だけで業者を選ぶのは危険です。実績やアフター対応、管理組合との協議への柔軟さも重要な選定基準です。
まとめ
大規模修繕工事にかかる費用は、工事の内容や建物の規模によって異なり、一般的には新築時の建築費の1割程度が目安とされています。住戸1戸あたりで換算すると100万〜150万円程度ですが、特別な設備がある場合はさらに増加することもあります。コストを抑えるためには、長期修繕計画の活用や複数業者からの見積もり取得、設計監理方式の採用などが有効です。とはいえ、「安さ」ばかりにとらわれず、信頼できるパートナーを選ぶことが最も重要です。修繕の時期が近づいているマンションでは、早めに情報収集をはじめ、理事会・管理会社・修繕委員会が連携して計画的に進めていきましょう。