大規模修繕について知つておこう。準備と実践!

マンションでは、建物の寿命を延ばし将来のトラブル防止ための修繕を計画的に実施します。一定の年数ごとの大規模修繕は管理組合最大のイベントとなります。分譲マンションの大規模修繕の最も特徴的な点は住民が日常の暮らしを営む中での実施が前提であるということです。またマンション毎に劣化の質と度合いが違うため、正確な工事費用の算出には事前の調査・診断が欠かせません。

永住志向の高まりと大規模修繕工事の関係

マンションの住人の高齢化が進む中で、永住志向も高まっています。「平成30年度マンション総合調査」(国土交通省)によれば、マンション居住世帯主の年齢は60歳以上が半数を占め、62.8%の区分所有者が「永住するつもりである。」としています。

国は建て替えを円滑に進めるべく施策を実施していますが、実際のところマンションの建て替えはあまり進んでいまません。「マンション建替えの実施状況の調査」(国土交通省)によるに、これまで建て替えられたマンションは、全国で準備中を含め300件弱に留まっています。

実は、マンションで建替えをおこなうことは想像より難しく、建替えをしないでマンションの延命を目指すほうが現実的な選択肢との認識が広まっています。マンションは部位、部材ごとにメンテナンスや取替えが必要となる適切な時期があります。これらの修繕項目の内、周期が重なるものをまとめて修繕することを大規模修繕工事と呼んでいます。

大規模修繕工事の必要性

大規模修繕工事の必要性大規模修繕をきちんとおこなえば建物の劣化を遅らせて快適さと資産価値を守ることができます。また、外壁の剥がれタイルの落下などによって住人が思わぬ事故でケガをしたり、補修工事で多額の出資を余儀なくされるといった危険を防ぐことができます。

マンションの多くは鉄筋コンクリート造ですが、一般にコンクリートの寿命は100年などといわれています。建物を長持ちさせるために一番重要となるのが、建物内への雨水の浸入を防ぐことです。大規模修繕で屋上防水や外壁を補修することで、コンクリート内部に雨水が染み込んで内部にある鉄筋が錆びたり中性化するのを防ぎます。

計画的に修繕をおこなわずに、その場しのぎで小修繕を繰り返していると結局は、まとめて一時期に工事を実施するより高くつくケースも多く、大規模修繕として一括して工事を行うが結果的に修繕積立金の節約につながります。また、一時期に集中して工事をおこなわないと、常にマンションのどこかで工事がおこなわれている状態になってしまいます。

大規模修繕の実施時期について

実際のところ大規模修繕工事は、あまり痛みがひどくならない内に予防・保全的におこなう意味合いが強いものなので、適切な修繕実施時期の判断は難しいものです。

したがって、大規模修繕工事は「何年ごと」におこなうといった決まりはありません。昨今では、マンション大規模修繕の周期は、これまでの12年周期から15、18 年へと延長される傾向もみられます。しかし、一般的には大規模修繕工事は12年周期程度で実施するのが適当とされています。

これは、国土交通省が公表している「長期修繕計画作成ガイドライン」で大規模修繕工事をの修繕周期の目安を12年程度としていることが影響しています。これも使い方や日常の手入れ次第で延長できる場合もあります。特に初回の大規模修繕工事をしっかりと済ませられれば、2回目以降の工事時期を15~18年周期に延ばすことも可能となります。

管理会社任せなら12年周期で実施される

管理組合の管理方式は、自主管理の他、管理会社への部分委託、全面委託のパターンがありどの方式であるかもを大規模修繕工事の進め方に影響を与えます。

管理会社に任せで何も言わないでおけば、通常は12年周期での大規模修繕工事が実施されることになります。

前述のとおり、大規模修繕の時期は固定されていないので、「建物診断」や「建物劣化診断」と言わる専門家による調査にもとづいて実施時期を決定すことが大切になります。

状態が良い部分は工事を先延ばしすることも可能なので、たとえば、今回は足場を立てるので足場が必要な外壁とサッシ周りのシーリングの打ち替えをおこなって、足場が不要な共用廊下は後回しにしようといった具合です。

長期修繕計画の作成

マンションの長期修繕計画
大規模修繕工事の成否を分けるポイントは事前にいかに入念な計画を立てておくかです。しっかりとした計画に基づいて工事終了までの各プロセスを着実に進めていきます。まず、長期修繕計画は分譲時にデベロッパーが作成ますが、長期修繕一度作成したら終わりではなく、管理組合ができた後は、マンションの実態に合わせるために概ね5年ごとに見直すことになっています。

長期修繕計画は修積金の額を決める根拠

長期修繕計画は、修繕積立金の額を決める際の裏付けとなるものです。大規模修繕工事には多額の費用がかかるので、工事間際になって工事費用を一度に徴収することは困難です。そこで長期修繕計画で算出された必要な額を組合員から毎月少しずつ徴収することが重要になります。

分譲時に作成された長期修繕計画は、あくまで一般論を基準に作成されたものなので、理事会や修繕委員会が中心となってマンションの実情にあわせて適宜、見直しをおこない、費用が不足する場合にはあわせて修繕積立金の額を改定していくことが重要となります。長期修繕計画はマンションの維持・管理には不可欠なものといえます。

部位ごとの修繕サイクルの例

部位ごとの修繕サイクルの例個々のマンションの環境やメンテナンスの状況によって各部位の耐用年数は異なりますが、過去の多くの事例等から割り出された標準的な修繕周期を参考にすることができます。ただし、これはあくまで目安ですので修繕を実施するかどうかの判断は、専門家による劣化診断を受けて検討する必要があります。大規模修繕では雨水の侵入を防ぐことが最も重要となるので、屋上防水や外壁補修は、毎回おこなうケースが多いでしょう。

屋上防水( 10 ~15 年)
ウレタン、シート、アスファルトいった防水工法の違いにより耐用年数が異なる。既存の防水層を撤去する場合と、被せて施工する場合がある。
外壁塗装( 12~15 年)
アクリル系、ウレタン系といった塗装の種類によって耐用年数な異なる。外壁塗装によって美観の維持とコンクリート面へ雨水の侵入を防ぐ。
シーリングエ事(10 ~12 年)
外壁や窓枠などに施されているシーリング材も経年による劣化により雨水の侵入の恐れがあるため、定期的な打ち替えが必要。
外壁タイル補修(12 ~15 年)
タイルの浮きや割れが発生するとコンクリート面に雨水が浸水したり、タイル落下事故の危険性があるため定期的な補修が必要となる。
鉄部塗装(6~8年)
直接雨があたる外階段の手すりどは耐用年数が短くなるため、外壁塗装や屋上防水をおこなう間で1回実施する必要性がある。
エレベーター設備の更新(30年程度)
1基あたり数千万円からそれ以上という負担
機械式駐車場設備の更新(20~25年)
駐車場設備の入れ替えが必要となる。空き区画が多い場合には、解体・撤去して平面化を検討することも必要

修繕積立金は将来いくら必要かで逆算

修繕積立金額の算定では、長期修繕計画による将来にわたっての修繕費の総合計を各区分所有者の共用部分の持ち分により案分し、修繕積立金の額とします。修繕積立金の徴収方法にはいくつかの方式があります。

  • 均等積立方式
  • 段階増額積立方式
  • 一時金徴収方式

特に多く採用されているのは「段階増額積立方式」で新築入居時には、修繕積立金は低く設定されているが、一定期間ごとに、段階的に増額をおこなっていきます。

入居当初は、修繕積立金が安いことで喜んでいても、いずれは年金生活や家族の介護が始まっていたり、各世帯の状況は様々です。長期修繕計画により新たに算出された必要額に基づいて修繕積立金の額を適宜が見直しをしていく必要があります。修繕積立金収入はマンションの適正な維持管理に欠かせません。

大規模修繕工事の工事期間

大規模修繕工事の期間は、工事着工開始から終了まで、マンションの規模や内容によって異なるものの、小規模マンションでも2 〜3ヵ月、大規模マンションになると半年以上となることが多い。

大規模修繕工事の実施には、最終的には総会による決議が必要となるため、総会の開催や、必要に応じて外壁色の決定等の準備などがあります。

計画からの完了までに、管理組合の事情やマンションの規模によって違いますが、工事着工前の準備期間だけでも1年以上はかかるでしょう。

大規模修繕工事に適した季節

工事に適した季節は春から初夏、秋のシーズンです。大規模修繕では、養生ネットでバルコニー使用や窓の開閉に制限がでるため、できるだけ年末年始の足場設置は避けるようにします。

建物劣化診断

建物劣化診断の必要性長期修繕計画では、建物の部位ごとの大規模修繕のタイミングを定めていますが、これはあくまでも目安にすぎません。本当に必要な部位だけ工事を行うために、事前に専門家による建物劣化診断を受けることが重要です。

大規模修繕に備えた建物診断を工事予定時期の1~2年前にはおこなって、どこを修繕するかの見当をつけることで適切な修繕計画を立案することがかのうです。診断の結果次第で先送りをできる部位がみつかれば工事費用の節約につながります。

「長期修繕計画作成ガイドライン」(国土交通省)でも、事前に専門家による建物の劣化状況を調査することが望ましいとされています。

修繕委員会の設立

修繕委員会の設立長期修繕計画を見直す場合や、検討期間が長期問に及ぶ大規模修繕工事の前には、修繕委員会(専門委員会)を設置するなど理事会を支える体制を整えることが第一歩です。

理事会の下に修繕委員会を設け、長期的な視野から修繕の進め方や工事の発注方式などを検討します。修繕委員会のメンバーには、過去の理事経験者や建築の知識がある方、人望のある方などバランスよく集めます。

施工会社やコンサルタントとの関係

大規模修繕工事では、第三者的な観点から組合を支援してくれるコンサルタントなどの専門家とともに進めことが重要になってきます。こうした専門家との関わり方は「責任施工方式」「設計監理方式」といった発注方式によってかわってきます。

これまでは、透明性と公正さの点で「設計監理方式」が望ましいとされてきましたが、コンサルタントと施工会社の談合・キックバックといった問題が話題になり「責任施工方式」も見直されてきています。

大規模修繕の2つの発注方式

修絶工串の発注には大きく分けると、設計監理方式と責任施工方式があります。設計監理方式は、設計者と実際の施工業者が異なります。責任施工方式は、施工する工事業者が設計から施工・監理まで一貫して行います。
いずれの方法であっても、費用が大きいので工事見積りは数社から取るか、公募をかけるケースが大半です。

大規模修繕の2つの発注方式

大規模修繕工事の実施回数と進め方

大規模修繕工事も回を重ねるごとに求められる内容も変化
大規模修繕工事では、実施回数によって工事に求められる役割も変化してきます。第1回目の大規模工事では、原状回復を目的として、屋上防水・外壁改修、鉄部塗装などを中心に行いますが、2回目以降は、修繕すべき箇所も増える他、ライフスタイルの変化に対応するため設備をグレードアップしたり、高齢化する居住者のため建物をバリアフリー化したりすることも計画に織り込む必要があります。原状回復だけではなくライフスタイルの変化や社会情勢にあわせ、新たな機能の追加やデザインを変更するといったグレードアップも考えていかなくはなりません。

第1回目の大規模修繕

原状回復を目的として、屋上防水・外壁改修、鉄部塗装など「新築当時の建物の姿に戻したい」というコンセプトで計画され実施される。

第2回目の大規模修繕

第2回目の大規模修繕居住者のライフスタイルも徐々に変化していき新築の建物と比較して劣るため何らかの改良や機能向上を加味した修繕工事となる。

第3回目以降の大規模修繕

第3回目以降の大規模修繕マンションの設備、エレベーターや給排水管やガス配管設備が寿命になるため設備のリニューアルも合わせて検討する。

組合員の合意形成

マンションで行われる大規模修繕は、住みながら行う工事です。従って、生活になるべく支陣をきたさないという工夫が必要になります。

最終的には、大規模修繕の内容は総会での決議が必要になります。しかし、提案内容は膨大なものとなり、審議の時間も限りがあります。事前に検討内容を広報・説明会等で周知し、多くの意見を聞くことが不可欠です。

総会前の説明会の開催

大規模修繕では、施工会社選定の理由や、なぜ工事が必要なのかが論争になることがあります。総会前に説明会を開催して、事前にこれまでの検討経緯の説明や、組合員からの質問や意見を得ておくことが重要です。